column of 14.5.5
私たちの仕事は、久しく「3K」と呼ばれてきました。
今でも、それが変わったわけではありません。
ですが、いつか私たちの組織が、「介護事業を目指すなら、絶対にあそこに行きたい」と思われるような、そんな場所になるようこれからも努力を重ねたいと考えています。
私が、高齢者福祉と出会ったのは、平成2年。亡父が、故郷である「千種町」に『特別養護老人ホームちくさの郷』を開設したことに遡ります。
それまでの私は、老人介護とは全く縁の無い世界に生きていました。
事務長としてちくさの郷に赴任したのは、33歳の頃。ちょうど、これからの人生に何を成し遂げるか迷いあぐねているような時期でした。
自分自身の田舎とはいえ住み慣れた土地を離れ、右も左もわからない業界に飛び込むことには、多くの不安がありました。
若さゆえの無謀さとも言えますが、それでも何かを成し遂げたいという思いだけに突き動かされていました。
しかし、自分が飛び込んだ世界は、これまでの生活とあまりにもかけ離れていました。
確かに、福祉を志す人たちの純粋な奉仕的精神にも触れ、心の師と言える人たちとも出会いました。そして、崇高な仕事と言われる意味も自分なりに理解できました。
ただ、いつもどこかに違和感を覚えてもいました。
例えば、言葉遣いや挨拶など、一般企業では常識といえる社会人としてのスキルが十分に備わっていない人が多いこと。
例えば、研修などの席に平気でジーンズで参加する人がいること。
一つ一つは小さな事ですが、誤解を恐れずに言うなら、トータルのイメージとして、「閉鎖された独特の世界」であるように感じたのです。
そのことに悶々としながら時は過ぎ、ただそのイメージを払拭したいという想いだけは次第に強まっていきました。
「何かを変えるためには、力をつけなければいけない」そんな想いとともに神戸に進出し、事業を展開してきました。
そして、その一つ一つに対して、自分自身が"クオリティが高い"と感じるエッセンスを落し込んでいきました。
ただ問題は、ハードでだけはありません。より大切なのはソフトです。
ソフトで力をつけるとはどういうことなのか―。
私に言えることは、まずはしっかりと"勉強する"ということです。
仕事をする上での理論はもちろん、人としてのマナーやエチケットを身につけ、清潔感や身だしなみにもこだわりを持つ人になっていただきたい。
そのためには、この仕事の外にあることにも目を向け、多くのハイクオリティなもの、センスの良いもの、美しいものに触れ、自分を刺激する場所に出かけて、自分自身を磨いてほしいと思います。
それと同時に、この仕事の本来的な意味について、たゆまず学び続けることや研究し続けること。それこそが、この仕事の本当の価値を高めます。
私たちの仕事は、本来「人が生きること」に直結した、とても深みのある仕事です。
その深みは、時代の流れや人の生き方などにも影響されますので、わかったつもりでいても、常にその先に新しい可能性があるのです。
そして、それを追い求めることは、結果的に自分自身が生きていく力にもなるはずです。
こうやって仕事ができる時間は無限ではありません。若い皆さんにも、「この一瞬」を無駄にせず、自分の未来は自分自身で切り開いていただきたいと思っています。