―帰り道の事故。宮崎の大学を卒業後、神戸での生活も落ち着いた頃。
現場から相談員、主任を経て、新規施設の立ち上げに
参加することになっていた彼を、突然の不幸が襲った。
顔面が陥没するほどの衝撃を受け、気が付いたら病院のベッドの上だった。事故の前日、入浴介助を行っていた彼は、
自分では身動きが取れないベッドの上で、体を拭いてもらった。
心地よさとともに、はじめて介助される立場を知った。
じっと横になっていると、看護師さんの声音やちょっとした動作が気にかかる。声のかけ方ひとつにも、その人の感情が現れる。
「本当の思いやりってなんだろう。」
長い入院生活と辛いリハビリの中で、何度もそれを思った。
その後彼は退院し、復職の日を迎えることになる。
彼の通勤負担を考慮し、以前の施設における就業の話が進められた。
彼は、どうしても新規施設のオープンに参加したかった。
そのために辛いリハビリにも耐えた。意を決して、CEOのもとに行った。その時、CEOから思いもよらない言葉を告げられた。
「岩岡の郷に戻るのは、もちろん通勤の負担を考えてのことやけど、
それだけじゃない。お前に、岩岡の郷の施設長をまかせたい。
お前を信頼しているからや。」そして今彼は、岩岡の郷施設長を経ておおぎの郷施設長として活躍している。