まるで、ソシアルダンスのような動き―。
はじめて彼の技術指導を見たとき、無駄のない美しい動きに『芸術だ』と思った。自分にも相手にも負担がかからない。
見えない何かに支えられ、まるで流れるように二人の身体が動いていく。
そこに一切の不自然さはない。
最近ソシアルダンスの動きが介護に用いられると聞いて、妙に納得した。
ダンスのリードとフォロワーの動き。彼は、ごく自然に独学でそれを身に付けた。おそらく、相手の最善を考えるうちに、
自然とそのような動きを習得していったのだろう。
相手への最大級の思いやりと、相手からの絶大な信頼があるからなせる技。
不愛想にも見える彼のモットーは「笑顔」だ。
いつもお互いに笑い合っていたい。根本にあるのはその気持ち。
ただ、理に合わないことには手厳しい。そして、時にはあまのじゃく。
しかし、納得できれば妥協はない。
昔こんなことがあった。
彼が入職して2年目ごろのこと。
目の前で一人のご利用者さまに異常が生じた。
その時、彼の咄嗟の判断が功をなしその方は一命を取りとめた。
彼が現場にいること― それが大きな安心となる。
彼の動きに迷いはない。
あるのは相手を思う気持ちと、お互いの『信頼』だ。